2021年12月01日

機械加工と3Dプリンタの使い分け

開発プロセスに3Dプリンタを取り入れるためには、3DCADが必要です。
そして、導入した3DCADの効果を最大限に発揮させるためには、3DCADで作った3Dデータをいかに有効活用できるかにかかっています。せっかく、3DCADを導入しても設計部門のみで活用していては、その効果が限定されてしまいます。
3Dデータを有効に活用するには、顧客や社内向けのプレゼンで活用したり、CAE解析や金型設計データと連携させたり、組み立て手順書、カタログなど各種ドキュメント製作に活用したりと、全社的に幅広く使い回すことです。

また、3Dデータを活用して、同時並行で開発を進める「コンカレントエンジニアリング」と呼ばれる開発手法を取り入れる企業も出てきています。このように、3DCADは、従来の2Dベースの開発と異なり、使い方次第で開発効率を高めることができます。

フロントローディング設計
近年、商品の市場投入までの厳しいリードタイム短縮が求められる商品開発環境において、3DCADを活用したフロントローディングの考え方が従来にも増して重要視されています。
フロントローディングとは、設計初期(フロント)に負荷をかける(ローディング)という意味で、設計の初期工程で設計品質を高める活動です。設計初期工程において、事前に問題の抽出および解決をしていくことで、開発リードタイムの短縮、開発コストの削減を実現しようとするものです。

通常、試作評価、量産試作など後ろの工程になればなるほど、不具合対策にかかる時間や手間は膨大となり、それに応じてコストも増加します。
そこで、このような問題を未然に防止する目的で、3DCADやCAE解析などのIT技術を取り入れた設計開発環境を整える企業が増えています。
3DCADでは、2DCADでは発見しにくかった部品の干渉やクリアランスなど設計の不成立部をPC画面内で容易に発見できます。また、CAE解析では、従来、実験してみなければ分からなかった性能、強度、振動問題などを、コンピュータ上で確認できます。
これら3DCADやCAE解析などの設計ツールを活用すれば、試作品を作る前段階で設計品質を高められます。
そして、現在では上記の設計ツールに加えて、設計者自ら3Dプリンタを使って、フロントローディングを目指す設計スタイルが定着しつつあります。

ポイント

3DCADでは設計の不成立部を容易に発見できる
CAE解析では実験せずに性能、強度、振動問題などを確認できる
3Dプリンタによるフロントローディングの実現
3Dプリンタを導入することで、これまでの開発プロセスに変化を起こせます。3Dプリンタは、特に設計初期工程での活用が有効であるため、フロントローディングが実現しやすくなります。

試作の機会と回数を増やす
フロントローディングを実現させる大きなポイントは、「試作の機会と回数を増やす」ことです。
多くの場合、外部の試作会社に依頼して試作品を製作する関係から、コストや納期などの調整に設計者の時間がとられます。また、評価項目やN数をきちんと計画して、最小限になるようよう依頼しなければなりません。つまり、外部に依頼して試作品を作る開発環境ではどうしても、試作機会や回数が制限されます。
一方、3Dプリンタを導入すれば、設計で気になる部分が発生した場合、すぐに作って検証し、結果を設計に反映できます。このようなスピーディかつスムーズな開発環境が、フロントローディングを実現させるために重要なポイントとなります。
一般的に検証回数に比例して設計品質は向上する傾向にあります。

コミュニケーションを強化する
フロントローディングを実現させる2つ目のポイントは、「関係者とのコミュニケーションを強化する」ことです。
設計の終盤に発生する手戻りの中には、性能面以外に顧客の要求が反映されていないケース、製造側の要件が入っていないケースなど、関係者間のコミュニケーション不足によるものが含まれます。実物の製品ができてはじめて関係者から意見が出されたという経験も多いのではないでしょうか。つまり、コミュニケーション不足による設計手戻りは、意外と多いというのが現状なのです。
このようなコミュニケーション不足を原因とする手戻りを削減するためには、従来のような図面や3DCADの画面をプリントアウトしたものに加えて、3Dプリンタで作成した試作品(実物)を併用することです。これにより、操作性、組み立て性、加工性、質感、大きさなど、より正確で多くの情報を関係者に伝達できます。その結果、関係者から出される意見や要望の数が増えることになり、手戻りをなくせるだけではなく、よりよいアイデアが出され、製品性能の向上や組み立て易さやコストダウンに繋がることでしょう。

それぞれのメリット・デメリットを理解する
もちろん機械加工でも、フロントローディングは実現できます。ただし、機械加工は納期に1週間以上必要とするため、厳しい開発リードタイムの中で試作と検証を繰り返す頻度は限定されます。特に、複雑な形状であれば納期が長くなり、コストも増大します。もし、機械加工で対応するのであれば、右図に示すように、短納期でできる簡単な形状、3Dプリンタで製作できない大きな形状などが適しているといえそうです。
一方、3Dプリンタで製作が難しい大きなサイズの場合でも実製品と同じサイズで製作する必要がない場合があります。デザイン性や形状確認であればミニチュアモデルを作ることで、目的を果たせるケースもあります。
さらに、3Dプリンタでは複数の部品で構成される組み立て製品を一体で造形できるので、設計者のアイディア次第で活用範囲は大きく広がります。

3D CAD 時代の盲点とは?
1980年代ごろまで活用されていたドラフターを使った設計の時代、製図台にある図面は常に開発メンバー同士で見やすい環境にありました。そのため、先輩設計者のアドバイスが受けやすく、設計の修正もその都度できるといったメリットがありました。
しかし、現在はドラフターに代わって、3DCADでの設計が主流となりました。
設計情報が伝えやすくなったと言われる一方で、小さな画面内で拡大縮小しながらのCAD操作では、ベテランの設計者からの指摘を受けにくい環境にあります。図面が完成して印刷されるまでは、2DCADと同様に設計の状況を把握することは困難です。
そこで、ドラフターを使っていた頃のように、「設計を見える化」することでコミュニケーションの強化につながり、手戻りの削減になります。
設計で気になる部分があれば、すぐにプリントして関係者の意見を集約する、デザイン案や検証に使った試作品を社内デスクに置くなどして、社内関係者が手に取って会話が生まれやすい環境を構築することが大切です。

機械加工と3Dプリンタの使い分け
ここまで解説してきたとおり、3Dプリンタと機械加工はそれぞれ異なった特長を有しており、その特長を活かして上手に使い分けることがフロントローディングにつながります。
3Dプリンタは、設計初期から中盤にかけての試作の機会と回数を増加させ、コミュニケーション強化を図ることで手戻りを減らす効果を狙えます。
特に、設計初期においては、製造要件まで考慮されていない図面が多く、きちんと加工ができる試作用図面をわざわざ起こす必要もなく、アイディアをすぐに印刷して確認できます。
機械加工は、設計中盤から後半にかけて、量産品と同等レベルの性能評価が必要とされる場面での活用が好ましいでしょう。もちろんこの段階においても3Dプリンタで製作した試作品で評価できることもあるため、併用するのも良いでしょう。

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Posted by carlson  at 15:20 │Comments(0)

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