2021年12月30日

ブラシレスモータのセンサレス駆動技術

ブラシレスモータのセンサレス駆動技術
ブラシレスモータをより小型、高信頼性、低コストを追求してゆくには、 どうしてもセンサを使用しない(センサレスモータ)は避けて通れません。 本章では、センサレス制御を紹介したいと思います。

実際にセンサレスモータは、 エアコン用モータ、ハードディスクやハイブリッドカーやドローンなどに 使用される様になり、普及が加速しています。 今後も様々な用途に広く使用されてきており、 センサレス制御技術の需要、重要度は一層増えています。

センサレスの特長:誘起電圧によるロータ位置検出
ホールセンサの様なロータ位置検出センサを使用しないため、 センサの代わりに各相コイルの誘起電圧検出を行いロータ位置を推定する方法をとります。 これをセンサレス制御と呼んでいます。

センサレス制御では、 ロータが回転しコイル相の切替時に発生する誘起電圧を検出することで ホールモータ同様にロータ位置を知る方法です。

回路的には、モータ出力電圧から誘起電圧を比較検出するコンパレータと 位置推定処理(マイコン等の演算器)回路が必要になります。 よって、ホールモータに比べ回路構成がより複雑になります。

逆起電圧の発生原理
3相ブラシレスモータのスター状のコイル結線では、 常に3つのコイル全てに電流を流すことは無く、 下図の様に通電駆動していないコイル相が必ず存在します。

モータは回転すると、必ず逆起電力(BEMF)が発生します。 通電していないコイル相でこの逆起電圧が観測することができます。

U、V、W相の各コイルの内オフになっている相が必ず1組存在するので、 通電していない相のモータ端子電圧が印加電源電圧の中点電位(1/2)に なる箇所(ゼロクロス点)を検出することでロータの位置が得られます。 ホールセンサ同様に電気角60度毎に特定できる仕組みです。

通電セクタパターンは、ホールモータと同じく 「6ステップ区間の繰り返し」で位相が進みます。

この方法の欠点は、モータ停止(もしくは極低速)状態では 逆起電力が発生しない(限りなく微弱)のでロータ位置検出ができないことです。

センサレス制御のメリットとデメリットのまとめ
●メリット:

①小型化できる
ロータ位置検出用のセンサを使用しないので 取り付けスペースが不要になり小型軽量化が容易になります。
②モータ組立加工、調整の省力
ロータ位置センサを取り付けるには、 ロータ磁石位置とセンサの相対位置関係を正確に合わせる必要があり、 かなりの手間と時間が掛かります。 センサレスにすればこの作業は必要ありませんので モータの組立/調整工程が大幅に少なくなります。
③信頼性の向上
ロータ位置検出に用いる磁気センサの特性は、温度環境で大きく変動します。 従って、高温度の環境下では使用できない制限もあります。 センサレスモータでは、この温度環境制限範囲は大幅に広がります。 また、ケーブルハーネス等含めた使用部品点数も少なくなるため、 モータトータルの寿命/信頼性が高くなります。
●デメリット:

①低速運転が苦手
センサレス制御では、一般的にモータ最高速度の10%程度が下限といわれます。 センサレス制御は、ロータ位置検出を仮想的に モータコイルの電気位相の切り替わりで発生する逆起電圧を検出することで 行っています。従って、原理的に極低速度での運転は困難です。 一般的にモータ最高速度の10%程度が下限です。
②応答性が悪い
センサモータに比べ、制御ループ系の中で位置、速度の推定処理が必要なため 変化応答性は、どうしてもセンサモータよりも劣ります。
③モータ個体ばらつきが直に性能に影響する
センサレス制御では、センサの代わりにモータコイル電流、電圧、 コイル定数(L,R)などのモータパラメータ値を用いて、 位置や速度を推定演算しますので、モータの個体差は顕著に出ます。 更にコイル巻線抵抗値は、温度変動量も大きいため 温度変動範囲も考慮して制御系を設計する必要があります。
センサレス制御の始動性を改善する運転テクニック
センサレスモータは、ロータ位置検出センサを用いないため 始動時には、誘起電圧は発生していないためロータ位置が把握できません。 従って、少し特殊なやり方で始動させます。 下記に具体的な始動運転方法の流れを示します。

①始動時、極短い時間、直流通電でモータコイルに電流を流してロータ位置を固定します。
(オープンループ制御での直流通電)
②次に強制的にコイル位相を変化させてモータを回します。
(オープンループ制御での位相シフト(強制転流))
③モータが回り始めると、コイル誘起電圧を検出(ロータ位置捕捉)し
クローズループ制御となりホールモータ同様な運転制御に入れます。
ここで用いている特殊な始動条件下記2項目は、モータに大きく依存するので センサレス制御で最も難しい工程です。 実モータによる入念な実験合わせこみが必要です。

●直流通電(直流励磁)時間

●強制転流周波数

うまく1回の始動シーケンスでモータが上手く起動できない場合が多く 始動条件を変えて再起動する仕組みを、 コントローラで設けることも必要になります。

通電位相角の違い
ホールモータの章で述べた様に3相ブラシレスモータの位相通電方法としては、 ホールモータ同様にセンサレス制御でも同じです。

●120度位相差による矩形波通電

●180度位相差による正弦波通電法があります。

高性能制御化にはモータコイル電流検出/制御も重要 モータを精度良く、効率良く制御するには、モータコイル電流を計測し サーボ制御系にフィードバックする必要があります。 この点もホールモータと同様センサレス制御でも重要な技術です。

①より高性能な制御を行うため
負荷変動などの外乱要因の過渡現象に対し安定して応答性良く、 高効率で運転するには、精度の良い電流計測によるトルク制御が必要です。
②過負荷保護機能のため
過負荷による過大電流などによる故障保護の目的です。
電流検出方法もホールモータの章で説明した シャント抵抗回路を用いて各相コイルの電流を検出し 制御器にフィードバックする方法を取ります。

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2021年12月23日

世界の産業用ロボットのシェアとロボットビジョン

日本では、2035年に10兆円規模になると予想されているロボット市場ですが、この傾向は国内のみならず世界でも同様です。その中でも注目されているのが産業用ロボットです。日本をはじめ欧州では労働人口減少、中国や東南アジアなどの新興国では人件費の高騰や品質向上を背景に製造工程の自動化が急務になり、産業用ロボットのシェアが拡大しています。

そこで今回のコラムでは、世界の産業用ロボットのシェアとロボットビジョンと題して、産業用ロボットの市場動向や今後成長が見込まれる業界・工程、ロボットビジョンの活用による未来予測などを解説します。ものづくりの現場は、自動化という変化が求められていますが、産業用ロボットとロボットビジョンの活用がカギを握っています。

世界から見る、産業用ロボットの市場動向
上述したとおり、日本国内では2035年に10兆円規模までロボット市場が拡大すると予想されています。この予測には、産業用ロボットのほか、医療や介護・福祉、清掃、ホビーといった分野も含まれていますが、その大部分を占めるのが製造業の産業用ロボットです。その背景には、少子高齢化による働き手の減少という課題があります。また、日本ロボット工業会の発表を見ても産業用ロボットの受注・生産・出荷が増加傾向にあることがわかります。

業種別の産業用ロボット市場動向
業種別で産業用ロボットの市場を見ると、自動車や電子デバイス(半導体等)といった分野での利用が多く、この傾向は今後も続くでしょう。さらに現在では食品や医薬品などの他産業での活用も増え、産業用ロボットのシェア拡大が予想されます。

それでは、特に成長が見込まれている製造業向けロボットの世界市場を見てみましょう。以下は、FA(ファクトリー・オートメーション)ロボットの世界市場を調査した最新結果です。2017年の産業用ロボット市場は、前年比23.7%増の1兆821億円となり、これを牽引しているのがEMS(electronics manufacturing service:電子機器の受託生産)やスマートフォン関連、自動車関連分野の設備投資です。特に小型ロボットの需要が増えており、技術革新で自由度が増したヒト協調ロボットの導入が進んだことも要因です。今後、従来のロボットでは難しかった複雑な工程の自動化やヒト協調ロボットの導入も進み、特に組立・搬送系ロボットの伸びが予測されます。

現在、産業用ロボットの活用が活発な自動車業界・電子デバイス業界に注目すると、ともにアクチュエーター系と組立・搬送系のロボットが利用されていることがわかります。また、自動車業界では溶接・塗装系、電子デバイス業界ではクリーン搬送系の活用も目立ちます。

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2021年12月18日

溶接ロボットのメリット

溶接ロボットとは、溶接機を搭載したロボットです。
一般的に流通しているものは、垂直多関節ロボットが主流です。

みなさんのご想像の通り、人の手を借りず、プログラム通りの動きを再現することができます。

従来の溶接作業は、高度な技術が要求されていたため、自動化はとても革新的といえ、
各ロボットメーカーが複数の機種を製造していて様々な作業に対応することができます。

ロボットシステムの中に溶接機が必要となること以外は、
基本的には、一般的な垂直多関節の導入と同様で、
ティーチングを行うことでロボットの動作プログラムを設定することができます。

そんな溶接ロボットを導入することにより、以下のようなメリットが得られます。

品質の平準化
生産性の向上
危険作業からの解放
人手不足の解消
他の作業工程を自動化する際に得られるメリットと同一です。
しかし、溶接作業では、必ずといっていいほど危険と隣り合わせです。

アーク溶接では、肉眼で直接見てはいけない“アーク光”が発生したり、
スポット溶接では、高圧で母材を押さえ、大電流を流す必要があります。

更には溶接によって人体に対して、有害物質を発生させてしまうこともあります。

そんな危険作業から解放できるのは非常に大きなメリットといえます。

また、手作業の溶接の品質を平準化させるのは非常に困難です。
木を接合させる際、毎回決まって同じ量の木工用ボンドを使い、
組み立てるのは難しいですよね。

自動化では、高品質を維持し続けることができ、同時に生産性を向上することができます。

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2021年12月13日

ロボットビジョンのメリット

ロボットビジョンの導入にはコスト的なデメリットはありますが、それ以上にメリットのほうが大きくあります。
メリットとしては、下記が挙げられます。

雑然と積んでも、混載の製品でも認識する
1ロボットで多品種の取り扱いが可能
段取りにかかるティーチング作業が不要
同一ロボットで複数の作業を同時にこなすことができるため、ロボットビジョン搭載の現場には人の工数だけでなく24時間フルで稼働させてもミスなく作業し続ける事ができます。
そのため、導入のデメリットはあまりないように思えます。

従来のロボットラインのように製品切替時に段取りが要らない事は、人手不足の生産現場や、ピッキング工場にとってプラスなのではないでしょうか?

しかし、一概にすべての業務でロボットビジョンを導入すればいいという簡単なことではありません。

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2021年12月06日

ロボット技術動向が分かるイベント

ロボット技術に対する期待度は大きく、今後もさまざまな技術が開発されていくことでしょう。現在は、そうしたトレンドがわかるイベントが定期的に開催されています。以下、代表的なものとして、国際ロボット展とロボット大賞についてご紹介します。

(1)国際ロボット展
日本で2年に一度開催されている「国際ロボット展」は、「ロボットがつなぐ人に優しい社会」をテーマに2019年で23回目を迎えています。国際ロボット展を通して、ロボット技術の動向やトレンドが見て取れます。

2019年の展示会では、協働型の産業用ロボットの機能向上による工場での人手不足の改善はもちろん、ロボットとシステム連携強化による「スマートファクリー」実現といった、生産能力向上の各社の方向性が示されました。また、次世代技術として「ヒューマノイド」関連の紹介もあり、川崎重工業のブースでは、災害現場を想定した人命救助のデモも行われました。

各メーカが産業用ロボットへのAI技術導入を進めており、AI学習の効率化によって中小企業などの製造現場への導入が容易にできるような取り組みを行っています。

(2)ロボット大賞
2006年から開催されている「ロボット大賞」は、産業用ロボットやシステムの研究開発はもちろん、人材育成に関する取り組みを表彰するものです。2018年の第8回ロボット大賞でも、各省庁の大臣賞が設けられており、以下のような企業や教育機関が受賞しています。

①トヨタ自動車株式会社、藤田医科大学:ウェルウォーク
下肢の麻痺患者向けのリハビリテーションロボット「ウェルウォーク」が、厚生労働大臣賞を受賞しています。既存技術を組み合わせながら、システムとロボットの連携により、患者に合わせたリハビリテーションプログラムを実施でき、社会実装を前提とした活動も評価対象となりました。

②株式会社ATOUN:パワードウェア
荷物搬入動作時の腰椎部への負担を減らすための着用型ロボット「パワードウェア」が優秀賞で表彰されました。空港などの現場への適用実績もあり、コストも比較敵抑えられていることから、ニーズを満たすと同時に普及の可能性が高いことも評価されています。

③清水建設株式会社:シミズスマートサイト
自律型ロボットと施工管理システムによって構築された建築施工用の生産システムの開発により、作業者とロボットが同時に工事を遂行する環境構築を目標にしています。既に工事への適用が進められており、普及の期待が高いことも評価され、優秀賞を受賞しています。

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2021年12月01日

機械加工と3Dプリンタの使い分け

開発プロセスに3Dプリンタを取り入れるためには、3DCADが必要です。
そして、導入した3DCADの効果を最大限に発揮させるためには、3DCADで作った3Dデータをいかに有効活用できるかにかかっています。せっかく、3DCADを導入しても設計部門のみで活用していては、その効果が限定されてしまいます。
3Dデータを有効に活用するには、顧客や社内向けのプレゼンで活用したり、CAE解析や金型設計データと連携させたり、組み立て手順書、カタログなど各種ドキュメント製作に活用したりと、全社的に幅広く使い回すことです。

また、3Dデータを活用して、同時並行で開発を進める「コンカレントエンジニアリング」と呼ばれる開発手法を取り入れる企業も出てきています。このように、3DCADは、従来の2Dベースの開発と異なり、使い方次第で開発効率を高めることができます。

フロントローディング設計
近年、商品の市場投入までの厳しいリードタイム短縮が求められる商品開発環境において、3DCADを活用したフロントローディングの考え方が従来にも増して重要視されています。
フロントローディングとは、設計初期(フロント)に負荷をかける(ローディング)という意味で、設計の初期工程で設計品質を高める活動です。設計初期工程において、事前に問題の抽出および解決をしていくことで、開発リードタイムの短縮、開発コストの削減を実現しようとするものです。

通常、試作評価、量産試作など後ろの工程になればなるほど、不具合対策にかかる時間や手間は膨大となり、それに応じてコストも増加します。
そこで、このような問題を未然に防止する目的で、3DCADやCAE解析などのIT技術を取り入れた設計開発環境を整える企業が増えています。
3DCADでは、2DCADでは発見しにくかった部品の干渉やクリアランスなど設計の不成立部をPC画面内で容易に発見できます。また、CAE解析では、従来、実験してみなければ分からなかった性能、強度、振動問題などを、コンピュータ上で確認できます。
これら3DCADやCAE解析などの設計ツールを活用すれば、試作品を作る前段階で設計品質を高められます。
そして、現在では上記の設計ツールに加えて、設計者自ら3Dプリンタを使って、フロントローディングを目指す設計スタイルが定着しつつあります。

ポイント

3DCADでは設計の不成立部を容易に発見できる
CAE解析では実験せずに性能、強度、振動問題などを確認できる
3Dプリンタによるフロントローディングの実現
3Dプリンタを導入することで、これまでの開発プロセスに変化を起こせます。3Dプリンタは、特に設計初期工程での活用が有効であるため、フロントローディングが実現しやすくなります。

試作の機会と回数を増やす
フロントローディングを実現させる大きなポイントは、「試作の機会と回数を増やす」ことです。
多くの場合、外部の試作会社に依頼して試作品を製作する関係から、コストや納期などの調整に設計者の時間がとられます。また、評価項目やN数をきちんと計画して、最小限になるようよう依頼しなければなりません。つまり、外部に依頼して試作品を作る開発環境ではどうしても、試作機会や回数が制限されます。
一方、3Dプリンタを導入すれば、設計で気になる部分が発生した場合、すぐに作って検証し、結果を設計に反映できます。このようなスピーディかつスムーズな開発環境が、フロントローディングを実現させるために重要なポイントとなります。
一般的に検証回数に比例して設計品質は向上する傾向にあります。

コミュニケーションを強化する
フロントローディングを実現させる2つ目のポイントは、「関係者とのコミュニケーションを強化する」ことです。
設計の終盤に発生する手戻りの中には、性能面以外に顧客の要求が反映されていないケース、製造側の要件が入っていないケースなど、関係者間のコミュニケーション不足によるものが含まれます。実物の製品ができてはじめて関係者から意見が出されたという経験も多いのではないでしょうか。つまり、コミュニケーション不足による設計手戻りは、意外と多いというのが現状なのです。
このようなコミュニケーション不足を原因とする手戻りを削減するためには、従来のような図面や3DCADの画面をプリントアウトしたものに加えて、3Dプリンタで作成した試作品(実物)を併用することです。これにより、操作性、組み立て性、加工性、質感、大きさなど、より正確で多くの情報を関係者に伝達できます。その結果、関係者から出される意見や要望の数が増えることになり、手戻りをなくせるだけではなく、よりよいアイデアが出され、製品性能の向上や組み立て易さやコストダウンに繋がることでしょう。

それぞれのメリット・デメリットを理解する
もちろん機械加工でも、フロントローディングは実現できます。ただし、機械加工は納期に1週間以上必要とするため、厳しい開発リードタイムの中で試作と検証を繰り返す頻度は限定されます。特に、複雑な形状であれば納期が長くなり、コストも増大します。もし、機械加工で対応するのであれば、右図に示すように、短納期でできる簡単な形状、3Dプリンタで製作できない大きな形状などが適しているといえそうです。
一方、3Dプリンタで製作が難しい大きなサイズの場合でも実製品と同じサイズで製作する必要がない場合があります。デザイン性や形状確認であればミニチュアモデルを作ることで、目的を果たせるケースもあります。
さらに、3Dプリンタでは複数の部品で構成される組み立て製品を一体で造形できるので、設計者のアイディア次第で活用範囲は大きく広がります。

3D CAD 時代の盲点とは?
1980年代ごろまで活用されていたドラフターを使った設計の時代、製図台にある図面は常に開発メンバー同士で見やすい環境にありました。そのため、先輩設計者のアドバイスが受けやすく、設計の修正もその都度できるといったメリットがありました。
しかし、現在はドラフターに代わって、3DCADでの設計が主流となりました。
設計情報が伝えやすくなったと言われる一方で、小さな画面内で拡大縮小しながらのCAD操作では、ベテランの設計者からの指摘を受けにくい環境にあります。図面が完成して印刷されるまでは、2DCADと同様に設計の状況を把握することは困難です。
そこで、ドラフターを使っていた頃のように、「設計を見える化」することでコミュニケーションの強化につながり、手戻りの削減になります。
設計で気になる部分があれば、すぐにプリントして関係者の意見を集約する、デザイン案や検証に使った試作品を社内デスクに置くなどして、社内関係者が手に取って会話が生まれやすい環境を構築することが大切です。

機械加工と3Dプリンタの使い分け
ここまで解説してきたとおり、3Dプリンタと機械加工はそれぞれ異なった特長を有しており、その特長を活かして上手に使い分けることがフロントローディングにつながります。
3Dプリンタは、設計初期から中盤にかけての試作の機会と回数を増加させ、コミュニケーション強化を図ることで手戻りを減らす効果を狙えます。
特に、設計初期においては、製造要件まで考慮されていない図面が多く、きちんと加工ができる試作用図面をわざわざ起こす必要もなく、アイディアをすぐに印刷して確認できます。
機械加工は、設計中盤から後半にかけて、量産品と同等レベルの性能評価が必要とされる場面での活用が好ましいでしょう。もちろんこの段階においても3Dプリンタで製作した試作品で評価できることもあるため、併用するのも良いでしょう。

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